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REPORT
先輩のSTARTING LINE -第1回- 幾多の挫折から見つかった“やりたいこと”

竹内 義晴さん(特定非営利活動法人しごとのみらい 理事長/サイボウズ株式会社)

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『先輩のSTARTING LINE』は、自分らしい生き方・働き方の実践者たちが、どのようにはじめの一歩を踏み出し、トライ&エラーを重ね、今に至るのかに迫った連載シリーズです。

段階を踏んで、前進してきた“先輩方”のエッセンスが凝縮された内容となっていますので、「いつかやってみたい」を「いまやっている」に変えていきたい、「やりたいことが見つからない、まとまらない」、「やりたいことを本当にやって良いのか?」、そんな疑問に対するヒントを得てもらえたらと思います。

第1回は、特定非営利活動法人しごとのみらい 理事長/サイボウズ株式会社の、竹内 義晴さんの記事となります。ぜひご覧ください。

※本連載シリーズは、TOKYO STARTUP GATEWAYビジネススクール連続講座 「スタトラ」 の中で行われたコンテンツ「先輩訪問」のレポート記事となります。


元々目標を持っていた 人間ではなかった

ー自己紹介をよろしくおねがいします。

竹内といいます。今新潟で楽しく働く人を増やすというのをテ ーマに NPO法人の経営と、サイボウズで仕事をしています。専門がコミュニケーションで企業研修、講演や執筆活動をやっていた最中、昨年の1月サイボウズの複業採用に申し込んで仲間に入れていただきました。今サイボウズでは企業価値を高めるブランディングという仕事をしています。チームワーク溢れる社会を創るという理念の元、多様な個性をどう活かして人々が楽しく生きがいを持って働けるかを実践している企業で働いています。

ーよろしければ地域の方でのご活躍も紹介していただいてもよろしいですか?

地域で活躍しているかというと、自分自身では厳密に言えばまだ活躍していないと思っています。自分は新潟の妙高市から神奈川に出てきて自動車会社で10年勤めた後、実家を継ぐ人が誰もいなくなったので、それを継ぐために田舎に帰りました。当時は地域を活性化させようという気はさらさらないし、地域の人間関係みたいなのが面倒くさいと思っていたタイプの人間でした。だけど、生まれ育った地元が好きだったので田舎に帰って、そこではプログラマーとして働いていました。地域との関わりは渋々やりだしたのが始まりだったんですけど、色々な関わりをしていく中で人がいないというのをすごく感じて。やばいな、なんとかしなきゃないみたいな感じで地域と関わっているというのが実状ですね。

ー今は東京と妙高で働いていらっしゃるというところで、今その様な暮らし方、働き方になった理由をお伺いしてよろしいですか ?

今はコミュニケーションが専門なんですけど、元々コミュニケ ーションは苦手だったんですよ。人と話すのが特別好きな訳ではなくて、プログラマーの仕事にすごくやりがいを感じていたんですよね。ゴリゴリのプログラマーみたいな。でも30歳を超えたぐらいで「管理職になれ」と言われて、嫌だなと思ってエンジニアでいれる会社にいようと考え転職しました。ですが転職した会社の働き方がめちゃくちゃだったんですよ。ストレスで人を動かすようなマネジメントを受けていたんですね。心が完全に折れて、病院には当時行ってないですけど、今なら間違いなく鬱ですと言われてもおかしくない状況です。さらにそこでも管理職をやれと言われて、やりたくないことをやらされて仕事やりたくなくなっちゃうし、もう会社を辞めて独立しようとしたんですよね。社長にそれを話したら、「良いけど金が無いだろうからお金が貯まるまで働け」と言われたんですよ。だから個人事業主に形だけなって 、3年間そこでお金を貯めるまで働いたんですよね。

その会社はメンバーも自分のような人が多かったです。薬を飲んでる人もいたし、職場だって1日しーんとしているんですよ。誰かのミスを手助けをしようものなら自分に降りかかってくるので、なるべく関わらないようにしているんですよね。そういう環境を嫌だなと感じて、せっかくだから楽しく働いてほしいなと思い、どうしたら良いか分からないなりに色々調べた結果、行きついたのがコミュニケーションだったんですよ。それでずいぶん勉強して職場で実践したら、思いの外うまくいったんです。今までプログラマーとしての生きがいを感じていたんですけど、人の成長を支援するのも楽しいなと思うようになって、ガラッと変えて企業の研修、コーチングとカウンセリング等を仕事にするようになりました。

2007年についに独立して、人材育成の仕事をしようとその頃までお金を貯めてから始めましたけど、それから約3年は本当悲惨です。新潟の山奥なんで仕事も無いしお客さんもいない。ネットで情報発信をしてひたすら食いつないでいました。今は、Webメディアや専門誌に寄稿したり、本を数冊出版させていただいたりしていますけど、ライターとしてものが書けるのも、こういう経験をしてきた結果なんですよね。僕はどちらかというと、もともと目標があったタイプでも理想、やりたいことがあった人間でもない。全部真逆で挫折から嫌だなと思って、それを乗り越えようとしてたら仕事ってこういう風にすると楽しいんだなと気づき、田舎でどうやったら仕事が出来るんだろうと考えてできることをとにかくやっていった結果、現在の仕事に必要な文章力も身についたんですよね。

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ネガティブさこそが 学びや気づきになる

<以下参加者質疑応答>

Q:今を築かれる中で一番大きかったポイントって何ですか?

逃げないということですかね。目の前で起きていることは一見ネガティブなように見えても、それはすごい学びや気づきになったりすることがあるんですね。その間にいる時はすごく苦しいんですけど、それを乗り越えた時に自分の力になることがすごく多い。ややもすると、世の中にある情報はやりたいことをやりましょうとか、ポジティブな面だけすごく言われている気がするんですけど、そうすると「やりたいことって何?」となり、やりたいこと探しを始めてしまう。でもネガティブなことが学びのきっかけになり、そこからやりたいことが見えてくることもたくさんあるんですよね。 あとやりたいことを探すのだったら、やりたくないことをはっきりさせた方が良いと思っています。やりたいことって意外と情報に左右されてしまいがちですけど、やりたくないことはどちらかと言えば自分の内面から生じる、周りの情報に左右されないものなので。やりたくないことを探した方が「あっ、これだな」とやりたいことへ辿り着きやすいかなと思います。

Q: 経験値が多く得られる機会として、複業は可能性を秘めていると思います。複業が世に広がるにはどうすれば良いでしょうか?

多分一つの物事を突き詰めるのが好きなタイプと、僕みたいな、いろんな経験をしてきたタイプの人が世の中にはいて。いろんな経験がある人には複業が合ってると思います。選択肢として複業はあっても良いと思うのですが、あくまで“働き方”の問題で「そもそもあなたは何をしたいの?」というところがはっきりしていないと、複業が目的化してしまった際に少し怖い気がします。でも経験値を積むという意味では、会社だけの経験値と外での経験値は全然違うし、仕事をしていく上での自立性を高める点では複業は増えてくるかもと思います。また、これから日本の人口が減って、単純に働く人が少なくなっていく中で経営が成り立たなくなってくる企業が増えてくると思います。リソースとしてフルタイムでなくてもいいので、「ちょっと手伝ってくれませんか」という話はどんどん出てくると僕は見ています。

Q:地方において提案をして人を巻き込むためにはどうすれば良いでしょうか?

東京では理想を語って、それに共感して人が集まることがあると思うんですが、地方はちょっと違うんですよね。新潟と東京の2拠点で活動している知人がいるのですが、地方と東京ではチームの作り方が違うって彼は言うんですよ。東京の場合は共感から入るけど、地方では協働からだと。草刈り、子供のPTA に入る等の活動から地域での関係性を作っていくと、酒の席などで「ところでお前何やってるんだ?」みたいな会話になり、その場でようやく理想を語ることができる。なのでまず人間関係を築いていくことが、結果的に仕事につながっていくような気がしますね。

目標なんか無くても全然オッケー

ー最後に新しい取り組みを試みようとしている参加者の皆さんに、エール又はメッセージをお願いします。

僕自身先ほど申し上げたように、目標があったというよりも、 その場をどう生きるかみたいなことを考えてやってきたタイプでして。人には明確な目標があって生きるタイプの人と、後から見えてくる人の二つのタイプがあって。今は明確な目標がありますけど僕はどちらかというと後者です。ですので、どっちでも良いと思うんです。もし目標ややりたいことがなくて困るのであれば 、今やるべきことをやれば良いですし。もちろん目標があればやれば良いと思うんですけど、どんな経験値も全て自分の未来に必要なことだと思っているので。失敗だと思っていたことが後になってみるとすごい役に立つということもたくさんあるので、汗水かいて一緒に頑張りましょうという感じですかね。

僕は今、新潟で研修センターを作りたいと思っているんですけど、東京から新潟に来て欲しいと考えていて。専門のコミュニケーションを活かして実務に役立つ研修をやりながら、農業で癒やされつつチームワークを学んでもらう。最後に温泉に入って皆でお酒を飲むような楽しい研修センターを作るのは僕の夢で。でもこれは最初から見出していたことでは全然ないんですよね。最初はすごくぼんやりしていて、色々トライアンドエラーをやっていく上で形作られてきたものなので、本当にはっきりしてきたのは、この数年かもしれない。こういった作り方もあるのでまずはやることが大切だと思います。目標なんか無くても全然オッケーってところですかね。

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PROFILE

竹内 義晴さん(特定非営利活動法人しごとのみらい 理事長/サイボウズ株式会社)

1971年生まれ。コミュニケーションの専門家/複業家。特定非営利活動法人しごとのみらい理事長。「仕事 を楽しくする」が活動のテーマ。職場の人間関係やコミュニケーションの問題によって生じる、モチベーシ ョンやメンタル的な課題を解決し、ビジネスパーソンが楽しく働けるよう、コミュニケーション研修・講演 、コーチング、カウンセリングに従事している。また、サイボウズ株式会社にて、ブランディング業務やチ ームワークの研究開発を行う複業家でもある。「パラレルワーク」や、地方を軸に東京を拠点とした仕事をする「リモートワーク」など、これからの仕事のあり方や働き方を実践している。著書に、『職場がツライ を変える会話のチカラ(こう書房)』『うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル( 秀和システム) 』『感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)』など。

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